下村勇二、大内貴仁緊急参戦!現役アクション監督が現在の日本アクション界に感じることを赤裸々に語る!

「JAPAN ACTION GUILD」発起人の一人である谷垣健治氏の取材に、この二人が急遽合流することとなった。

 

下村勇二氏(『キングダム』『今際の国のアリス』アクション監督、『RE:BORN』監督)と、大内貴仁氏(『HiGH&LOW』シリーズアクション監督、『るろうに剣心』シリーズスタントコーディネーター)だ。

この三人の関係を話し出すと本一冊になる勢いの為、残念ながら今回は割愛させて頂く。(各プロフィールはこちらのページにあるので、参照の上度肝を抜かれて頂きたい)

 

一つだけ確信持って言えるのは、三人が三人とも常軌を逸したアクション愛の持ち主であるということで、少しの空き時間にも全員で谷垣のノートPCを覗いては様々なアクション映像を見て少年の様な歓声をを上げている(笑)。

 

谷垣健治氏らと共に、発起人として名を並べる決意をした下村勇二氏、大内貴仁氏お二人にも「JAPAN ACTION GUILD」について、そしてアクション監督として現在の日本アクション界に感じることを赤裸々に語って頂いた。

 

アクション監督が「JAPAN ACTION GUILD」に見出す可能性

 

―――下村監督は谷垣監督と同じく、「アクション部会」に在籍での「JAPAN ACTION GUILD」への参加となりますが、どの様な経緯で決意に至ったのでしょうか?

 

下村:僕の場合、「アクション部会」に在籍はしていますが、忙しいのを理由に会合には一度も参加したことがない……もはや入ってないに等しい(苦笑)。

 

谷垣:幽霊部員(笑)!!

 

下村:正直に言うと、どこかで「アクション部会」に距離を置いてる自分が居たんです。(谷垣)健治さんが「アクション部会」に入って色んなことを変えようと奮闘していたのは知っていましたが、じゃあ自分が関わることで、何か現状が変えられるのか?と考えた時に、僕は健治さん程積極的になれず、どこか冷めた目で遠くから見ていた感じでした。

でも、今回の話を健治さんから聞いた時に、「アクション部会」で実現出来なかったことを、「JAPAN ACTION GUILD」なら実現させていけるんじゃないかと。

「アクション部会」から引き継ぐ案件も多々あると思いますが、それ以外に例えば、SNSなどで映像や情報を頻繁に発信していき、一般の方たちにもっとアクションを身近に感じてもらったり……制作側にアクションシーンを創る上で準備の重要性をもっと知ってもらい、そのための予算や時間も必要だと周知してもらったり……現役スタントマンや若手が参加したいと思える理想的な団体を目指したり……将来的に、JAGから様々な日本のアクションを発信することで、海外のファンや同業者とも交流を持てるようになったり……簡単に言うと、アクション業界の知名度を上げる事により、このJAGという団体が成長して色んな可能性が生まれるのでは!?と感じました。だから、発足のお話を聞いた時にはワクワクしましたね!同時に、時代が大きく変貌する今だからこそ、今までのアクションのイメージも少しずつ変えていくべきだと思いました。

 

大内:僕は(アクション部会に)興味が無かったわけでも何でもなくて(苦笑)、自分がスタントマンをしていた時から、スタントマンたちの労働環境であるとか労災問題であるとか、改善するべき問題だといつも思って来たんですよ。

今回の「JAPAN ACTION GUILD」に関して言えば……新たに立ち上げるということも大きいのですが、この二人が先頭立ってやるよって話を聞いたのと、この二人から熱烈なオファーをいただいたので(笑)「それなら面白いことができるかもしれない」と思って参加を決めたんです。今迄、なぜそういった団体に参加しなかったかと言うと、日本でのアクションのステイタス(社会的地位)を全体的に上げていこうとした時に、まず日本発信の面白いアクション作品つくることが重要なんじゃないかって思っていたところはあって。「海外のアクション作品は見るけど日本のアクションは見ないって人もまだたくさんいるなかで「日本のアクションもここまでやれるんだ」っていうことを世間に認めてもらうことが先なんじゃないかなって思ってたからなんです。日本のアクションの水準が低いにも関わらずアクション業界で団体を作った所で、世間の理解は得られないと思うし、当然「この人たち誰やねん!?」ってなりますよね(苦笑)。

注目されるアクション作品が増えれば自ずと世間はその作品で体を張っているスタントマンや、どうやってそのアクションは作られてるの?ってところにも興味をもってくれると思うんですよね。

例えば、トム・クルーズなんかはスタントを使っていることも公表するし、スタントマンの存在は広く認知され評価も受けてます。いつか日本もそうなれば良いな~とは思うんですけど、それって「そうなって欲しい」と発言したところでどうこう変わるものでもないですよね(苦笑)?

今回の参加にメリットが有るかないかは、正直まだわからないんですが(笑)この二人が真剣にやるんだったら、僕も協力したいなって思ったんです。

 

―――団体参加に消極的だった大内さんでも、JAGには少なからず可能性を感じたということですか?

 

大内:そういうことですね!……これは谷垣さんと下村さんにも何度も正直にはなしたんですけど……既存の団体の様になるんだったら……僕は参加しません!とハッキリ言いました(苦笑)。なので僕は明確なスタンスを持った上での参加です。この二人には今迄本当にお世話になってきていますし、参加しますが……要は先頭立って動いてね!二人が!ってことですよ(笑)!

 

谷垣:(笑)!先頭に立ちますよ、勿論ね。僕たちが参加して新しく映画が公開される度にね、それは撮影現場でも宣伝でもそうなんですけど、個人個人「お前らアクションなめんなよ!」って想いを持って作品に挑んでるでしょ?プロデューサーに対してもそう、お客さんに対してもそう。作りあげたアクションを通じて「アクションなめんなよ!」って毎回言ってるわけです。でも毎月新しいアクション映画を届けられるわけでもないし、やっぱり一人の声ではそんなに届かないわけでしょ?でも一人で届かなくても、十人で声を上げればもっと遠く、広く届くわけじゃないですか。そんな孤独で苦しい戦いを強いられるよりは(苦笑)、もっと他のやり方もあるんじゃないかなって思ってるんですよね。

 

―――ここ十数年で、アクション監督個々で見ると立場も知名度も以前とは比べ物にならない程に物凄い飛躍してると思うんです。でも個が束になるまでこれだけの時間が掛かってしまった要因って、一体何だとお考えですか?

 

谷垣:プロレスに全日本プロレスと新日本プロレスがある様に、昔はジャパン・アクションクラブと倉田アクションクラブという、大きな「アクションクラブ」っていうものがあって、仕事のオファーっていうのも、そういう「団体」ありきで行ってた感じですよね。それぞれのクラブに、アクション監督やスタントコーディネーター、スタントマンがちゃんと所属していて、そこのアクションクラブのメンバーで全てが完結していたわけじゃないですか。それが今はもっと細分化されてるっていうか……フリーのスタントマンが増えて、インディーズの団体も増えて、まさにプロレス界さながらです(笑)。で、実際僕ら自身も今の現状を掴み切れなくなってしまってたことが原因と思いますね。

だからJAGっていう枠組みは、誰が上とか下とかでは無く、加盟店が集まってる飲食業組合、みたいな感じを想像して頂ければなって。

 

―――「JAG」ではフリーランスのスタントマンも入会出来るということでしょうか?

 

谷垣:勿論ですよ!発足当初は僕たち発起人が矢面に立ちますよ(苦笑)!だけど最終的には、個人で活動してる人たちまでもが、JAGをうまく利用して自分の居場所を確立していって欲しいなと思いますね。アクションマンのアクションマンによるアクションマンのための組織。間違っても「JAGは谷垣がやってる組織」なんて、ほんっっっっとに思われたくない(苦笑)。

 

大内:僕が補足で言いたいことは、JAGなら入ろうと思ったのは、この二人を尊敬してるからだけではなくて、イデオロギーが似てるから、考えもお互い理解し合えるなって。でも、もしそこにお話したこともない大御所の方がパッと入って来ようもんなら、僕黙ってしまうかも(苦笑)。

 

谷垣:貝になるやろな(笑)!

 

全員:(笑)!

 

谷垣:今回の「JAPAN ACTION GUILD」発足に当たっては、「アクション部会」の高瀬将嗣さんがお亡くなりになったっていうのも、動き出したきっかけになったと思うんです。

僕が「アクション部会」に入った時に高瀬さんとこんな話をしたことがあるんです。「高瀬さん、アクション部会で委員会に出てくる人たちって、結局団体の社長とか、リーダークラスの人たちですよね?言ってみれば、代表取締役と組合代表という、本来は相反する立場の役職を兼ねているようなものですよね。ここで現役のスタントマンたちの権益(ギャラを上げる等)を勝ち取るのは難しいんじゃないですか?」って。

その時に高瀬さんが言ったのが「その通りだと思います。でしたらスタントマン協会の様な団体をスタントマンの方たちが外部で立ち上げたらどうでしょうか?我々はオブザーバー的、見守りの様な立場で参加して、スタントマン、実演家たちが中心となって纏まると良いですよね」って。

その会話の内容はどこかずっと僕の中に残ってたんですよね。だから発起人の僕たちがどうこうではなく、将来的には現役の人たちが中心に動いてくれれば良いなかな~って。どう(笑)?

 

下村:そうですね。僕も距離を置いてた理由に似た考えがありました。「アクション部会」には既に現役ではない方も在籍されているので、勿論、離れて見てるからこそ大切な意見もあったとは思いますが、今現場で起きている問題との温度差はあるなぁと感じたことは事実ですね。時代の変化と共に現場の在り方も変わってきています。今一度立ち止まって、目の前の問題から目を背けず、現役やこれからの人たちの為になる団体を目指したいですね。

 

海の向こうから見た「日本アクション界」の現実

 

―――三人に共通しているのが、日本国内のみならず、海外でも多くの仕事をしていらっしゃいます。海外のアクション事情を知ったからこそ感じる、日本のアクション界の改善点や、これから望むことなどあればお聞かせ下さい。

 

谷垣:倉田アクションクラブを経て日本の現場も経験しつつ、93年からは香港でスタントマンをやるようになり、「修羅雪姫(佐藤信介監督・2001年)」辺りから再び日本のスタントマンたちと仕事をする様になって感じたことは、日本でスタントの仕事だけで食べていけるイメージが全然無かったんですよね。その当時、アルバイトもせずにスタントだけで食べていけてる人はその当時一体どれくらい居たのかなってね、疑問に感じたのは凄く覚えています。そこの部分は当時から比べたら、今は多少解消されていると思うんですよね。でも、あくまで“多少”です。中国にしろ、アメリカ、カナダにしろ、優秀なスタントマンたちはギャラもそれなりに貰っている。いずれも技術に見合った対価です。日本のスタントマンも優秀だけど……優秀なのに……もう少しギャラを貰えても良いんじゃないかなって。みんな、そこそこ暮らせているけど、“そこそこ”なんですよ。2010年位にね、ベテランスタントマンの一人がね、「日本のスタントマンで年収1000万円プレイヤーって、出そうで出ないですよね~」って。確かにそうだなって思いましたよね、他の分野ではうようよ居るのに。NHK職員とか(笑)。でも、スタントだけを突き詰めてやっても、“1000万プレイヤーは出ない”業界って、ちょっとおかしいかなって。

 

下村:日本は作品の規模によって、ギャラって左右されますよね。ハイバジェットと呼ばれる映画でも、ハリウッド並の予算はとてもじゃないけど掛けてない。平均すると結局そんなに引きあがってないというか。

海外だとね、スタントで豪邸建つなんて話しもありますもんね!健治さんとか大内みたいに(笑)。

 

大内:オーーーーイ(笑)!!

 

谷垣:オーーーーイ(笑)!!

 

谷垣:例えばアメリカとカナダのスタントマンのギャラを比べた時に、最初に支払われるギャラはカナダの方が高いんだけど、アメリカのスタントマンはレジデュアル(印税)が後から入ってくるから、最終的にはアメリカのスタントマンの方が高く貰ってるみたいですよね。プロダクションも、作品から出た儲けを分配するって考えだから、それは健全かな~って思いますね。日本だとね、声優とか、俳優にもある時はありますよね。

 

 

現場で実績を作り、声を上げていく

 

―――少し話は戻りますが、お三方とも「アクションには現場以上に準備が必要」といつも仰ってます。しかし、その準備時間を確保出来ない状況でのアクションシーン撮影のオーダーがまだまだ多いことも耳にしますが、JAGの発足で何らかの“スタンダード”や“分かり易い基準”を示せる様になる可能性もあるのでしょうか?

 

谷垣:それぞれのアクションチームやアクション監督にはそこのやり方があると思います。舞台とか僕たちが詳しく知らないアクションの現場も沢山あると思うんで、一概には言えないですけど、でもそれらを示すにはそれぞれの現場で実績を作って、そこから声を上げていくということが大事だと思っています。

例えば、「るろうに剣心」はおかげさまでとても認知度の高い作品になり、こんな作品をやりたいという人からもたくさん声をかけていただきます。その時に「『るろうに剣心』をやった時はクランクイン三か月前から役者のトレーニングをしました」と声を大にして言える。なぜならその準備の過程が直接「るろうに剣心」という作品の結果につながっているからです。こういう作品を作りたいのであれば、こういうことをしましょう、と。それがひとつのスタンダードになる。これから作品を作る製作サイドも「俳優にはこれぐらいのアクショントレーニングの時間が必要なんだな」って理解してくれる。「このエンディングアクションには1週間掛かりました」とか、「このシーンは事前にこんなビデオコンテ(※)を撮りました。〇日間〇〇人のスタントを稼働させました」とか。

既成事実として、こういう準備をしたからこそ、このシーンが撮れたっていう情報をみんなで集め合っていく必要があるかなって。実際今現場に立っていて、実績を積んだ人たちがJAGに集まることで、明確な声として響き易いのかな、と思ってます。

 

大内:僕が谷垣さん下村さんに共感したことはそこにもあって、よく「HiGH&LOW」みたいな大人数のスタントマンを呼べる体制が羨ましいっていわれるんですが、「HiGH&LOW」シリーズも最初からそうだったわけじゃないんですよ。シーズン1の時はいわゆるアクションを売りにするアクション作品にならない可能性も大いにありました。ドラマのプロデューサーにはある大アクションシーンのスタントマンも3.4人でやってくれといわれたりしたこともありましたし(苦笑)ドラマ中心かアクション中心かってところでほんとどちらの方向にいってもおかしくなかったんです。

でも、HIROさんが僕らの作ったVコンテをそのままやりたいっていってくれたことがきっかけで体制が大きく変わったんです。これまでもビデオコンテを出すことで、アクションの環境を変えれたことは何度もありますし。

でも、毎作品その環境で出来るとも限らなくて。

谷垣さんもいうように「るろうに剣心」はいいベースになってると思うんですよね。

 

谷垣:5人で100人分のアクション作ってたからな(笑)!

 

全員:(爆笑)!

 

大内:あのビデオこないだ、たまたま僕見直したんですよ!武田観柳邸の100人くらいの立ち回りを僕と福嶌さん、佐久間、柴田の4人だけで作ってて(笑)!

やられては立ち上がって別の人になってまた絡む、っていうのを延々繰り返してました(笑)「るろ剣1」の時は、まだこれくらいの体制でやってたんだなぁって。

 

谷垣:「絶対ビデオコンテがないといけない」とか、「ビデオコンテ通りに撮らなかったから、あの監督はアクションのこと分かってない」なんて意見がその内出て来ることも想像つくよ。でも、それはそれ。完全にケースバイケースだと思うから。ただ、「『るろ剣』の時はこうしましたよ」っていう情報が提供出来ることが大事だと思う。

アクション監督によっては「あの監督、ビデオコンテ通りに撮らなかったんですよ~」ってぼやく人も居るけど、肝心のビデオコンテ見せて貰ったら全然面白くないなんてこともある(笑)。そりゃこの通りは監督撮らへんやろ!って(笑)。

 

全員:(笑)!

 

大内:低予算の作品とか特にケースバイケースで、二日間しかアクションの準備時間が無い、とか。それはそれで楽しさがあるし、条件に関係なく面白いアクション作ろうと思うし。だから、必ずしも準備時間を沢山下さい!ってことでは無いんですよね(笑)。

 

下村:そうそう。求められるアクションの規模や予算によって臨機応変にやるので、どうしても準備に時間が必要だ!なければやらない!と言う事でもない。Vコンを準備していても、現場の役者のテンションや撮影状況を見て変更するのは日常茶飯事。低予算であれば字コンテだけの時もあります。

 

谷垣:オレなんて低予算の時に自分で絵を描いて(笑)それをケータイで撮影してビデオコンテみたいにするもん。

 

大内:あの下手な絵のやつですね(笑)!

 

下村:(爆笑)!

 

谷垣:シンプルで力強い絵(笑)!

話を戻すとですね、JAGが発足することでね、そういった情報を話せる範囲で、例えばその時の予算組みとか、呼んだスタントマンの人数は勿論、アクションスタッフとかバックステージの準備に一体何人必要だったのかとか伝えられると思うんだよね。それが内(アクション業界)に対しても外に対しても伝わることで、「アクションすげえ大変だな、アクションなめたらケガするな」ってなると思うんですよ。みんなが想像する以上のスケールの準備量だと分かると思う。

 

大内:例えば、谷垣さんや下村さんの作品を大好きなプロデューサーがね「予算これだけしか無いけど、面白いアクション作品作りたいんですよ……!」って初めから言ってくれる場合と、「予算無いからアクションそんなに要らないです」って言っておきながら、突然とんでもないオーダーしてくる場合、両方あるじゃないですか(苦笑)。予算状況は全く同じでも、それって真逆のアプローチで……

 

谷垣:プロデューサーがもっとアクションを理解してくれると良いよね。簡単に言うと、この題材を撮るならカメラマンはこの人だよね~って判断を出来るプロデューサーは沢山居ると思うんだけど、この題材撮るならアクション監督はこの人だよね~って判断出来る人は、結構少ないと思う。プロデューサー間でも、こんなこと撮影したい時は人員と予算はこれくらい必要!みたいなのをあまり共有出来ていないと思います。

 

(※)ビデオコンテ(通称:Vコン)

アニメーターなどが作るのが絵コンテだとしたら、アクション部が実際の人間を使って映像で作るコンテのことをビデオコンテという。CG部が作るアニマティックスを用いたものはプリビズ(pre-visualization)と呼んだりする。

台本の文字だけでは各部署とのイメージの共有が難しいが、事前に映像がある事で各部署の準備が明確になり、更に予算、撮影時間などが計算できる。

 

―――共有出来ている情報が乏しい上、現場以外に膨大な準備が必要なアクション作品の予算組をするのはプロデューサーにとっても簡単ではなさそうですね……。

 

谷垣:プロデューサーから見たら、アクションが一番見え辛いのかもね。出演とスタッフワークを兼ねる唯一の部署だから。そういうところを、もう少し文章化をして共有していけたら良いと思ってるんですけどね。ギャラだけじゃなくてロケ地に前乗り(撮影現場に前日入りすること)だったら幾ら、とか。JAGでガイドラインがあったらプロデューサーと予算の話する時にもっとスムーズになると思う。

 

大内:アクション監督は人によってギャラが違うのは当然だと思うんですけど、「あのチームは前乗りにギャラが発生しないから使おう!」とか、「あそこはビデオコンテ作らないから安い」とか。それはアクションチームを選ぶ判断基準としてちょっとおかしいじゃないですか(苦笑)。もちろん作品の規模の大小によっては違えど、ある程度とベースとなる価格設定とかあったほうがいいと思うんですよね。これからは他のチームとの情報共有とかも大事なことだと思うんですよね。

 

 

いちアクション映画ファンとして話を聞いていて、「何て贅沢な時間なんだ……」と心から思った。こんなメンバーでのインタビューが実現するのも、「JAPAN ACTION GUILD」が発足したからこそと断言出来る。

 

読者の皆さまが誤解しない様、最後に書き加えておくならば、

今読んで下さったインタビューに書かれていたことだけが、「JAPAN ACTION GUILD」

の全意見ではない、ということだ。発起メンバーはそれぞれが持つ信念と理念を互いに融和させ、この団体を立ち上げた。更に、多くの現役世代が加わってゆくことで、日々JAGは進化し続ける団体になるだろう。

 

今後、発起人となった殺陣師、アクション監督は当然のこと、

現役世代に至るまでのインタビュー等を、“言葉で体験するアクション”として、ここ「JAG BLOG」で発信していければと思う。

 

そして第二回目のBLOGにして、この約一万文字(驚!)を最後まで読んで下さった読者とアクションファンの皆さまに、心から感謝申し上げます!!(取材・記事 /Y)

 

 

 

下村勇二の『俺が凹んだら観るアクション映画3選』

注)3本厳選できないので、ふと頭に過った作品から。特に凹んでなくても観る作品。(順不同)

 

「酔拳2」1994年

当時の香港映画はワイヤーバリバリの古装片が流行っていた。そんな中、ジャッキーが原点である肉体を駆使したアクション映画を回帰させた作品ともいえる。ジャッキー当時39歳とは思えないエネルギッシュな体当たりアクションは今見ても色褪せずパワーをもらえる。

 

「プロジェクトA」1983年

ジャッキー、サモハン、ユンピョウのゴールデントリオが活躍。現代アクションの幕開け的作品。有名な時計台落ちは、当時スタントマンに憧れていた自分にとって「映画の中でなら死んでもイイ!」という偏った思想が擦り込まれた(笑)「死ぬこと以外かすり傷」なアクションの連続は勇気をもらえる。

 

「燃えよドラゴン」1973年

自分にとって本作は映画と云うより聖書に近いかも。ブルースリーの哲学が反映されていて、台詞一つ一つが奥深い。当時アジア人が主演のハリウッド映画は皆無。背景を知れば知るほど、彼が武道家としてアジア人として本作に命を懸けていた事がわかる。怪鳥音と共に繰り出される身体動作は今観ても身震いする。